研究内容

地熱開発

地熱エネルギー

地熱エネルギーは地球温暖化の主原因である二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーであり、生産した熱水、蒸気により発電だけでなく熱エネルギーとしても直接利用することが可能です。さらに、他の再生可能エネルギーに比べて、安定して発電することが可能であり、火山国である我が国に豊富に賦存しています。
東日本大震災、それに係る福島第一原子力発電所事故により、日本のエネルギー供給システムは転換点を迎えていますが、そのような状況の中で、地熱エネルギーは安全・安心な再生可能エネルギーとして期待されています。

伊藤研究室では、従来の地熱発電が抱える技術的問題を解決するための研究に加え、次世代型の能動的地熱開発(Endgineerd Geothermal System)の実現のための研究も実施しています。

冷却に伴う地下き裂透水性の変化挙動に関する研究

地熱開発時に地熱貯留層から熱水、蒸気を生産すると、貯留層内の地熱流体の減少に伴い貯留層の地熱流体生産能力が低下し、発電量が減少することがあります。この問題の解決のため、地熱貯留層に水を注入し生産能力を維持する操作(涵養)を行います。低温の水を注入する際に、地下の高温の岩石が収縮し流路が形成される、貯留層に再度流体が蓄えられます。しかし同時に、貯留層の温度を下げてしまう場合もあるという問題もあります。本研究室では有限要素法に基づく数値計算手法により、涵養時の岩体の力学的挙動を解明することで、適切な涵養を行うための知見を得ることを目的とした研究を実施しています。

微小地震を利用した地熱貯留層の流路構造評価法の開発

キロメートルオーダーの深度にある地熱貯留層内の流路を構成するフラクチャーは、大きさも方向も一様ではなく複雑に分布しており、かつ、その厚みは高々数ミリメートルに過ぎない極めて薄い構造体です。そのように特異な構造のフラクチャーとその内部の流れを、可視光はむろんのこと電波も通さない、数千メートル厚の岩体を隔てた地表から直接的に評価できる方法は現在のところありません。本研究室では、この課題を解決すべく、フラクチャリング時に発生する微小地震を詳しく解析することで流路構造を評価する手法の研究を行っています。