研究内容

粒子-流体連成現象の解明

粒状体個別要素法による流体-粒子相互作用のシミュレーション

グラウト技術

グラウト技術は地下空間利用やトンネル工事等において、地下構造物周辺の土質地盤、岩盤の流体浸透挙動を制御する技術の一つであり、セメント系材料を主成分としたグラウト材を岩盤亀裂へ加圧注入することで岩盤内部の空隙を充填し、岩盤の透水性や力学特性を改良することを目的としています。

グラウト技術は、トンネル掘削やダム建設等、地下空間を利用する様々な分野で利用されていますが、わが国のように岩盤の割れ目や地下水が多い地質環境を考慮すると、大深度地下に多数の地下坑道の掘削・施工を行った場合、多量の湧水が発生することが予想され、このような多量の湧水は施工費用の増大や、地下空間の安全性低下を引き起こす可能性があります。そのため、地下深部の高水圧下で適用できるグラウト技術が必要不可欠となります。

グラウトの合理的な設計・施工のために

合理的なグラウト設計・注入管理、正確な評価を行うためには、グラウト注入の浸透メカニズムを理解した上で岩盤に浸透したセメント材料の量やその浸透範囲などを把握・評価する必要があります。

しかし、実際のグラウトの懸濁液の注入はセメント粒子と流体の混在した混相流であり、粒子と流体の相互作用により、亀裂幅とセメント粒子の粒径、粘性の関係による目詰まりの発生、亀裂入口からの距離の延伸に伴う流速の低下によるグラウト粒子と水との分離、および粒子の沈降、堆積、堆積の進行による亀裂の閉塞、それに伴う脱水、凝結等非常に複雑な現象が起こっていると考えられます。
そのため、岩盤中の亀裂や水みちなどの推定やグラウト材の浸透・硬化の過程等のグラウトの注入メカニズムについては十分には解明されていない部分が多く、実際の設計、施工に際しては多くの実績に基づき経験的に決定されているのが現状です。そこで、本研究では、流体流動を計算する数値流体力学と粒状体の挙動を追跡する粒状体個別要素法を連成させることにより、上記のような流体流動と粒状体の相互作用を検討することのできる数値解析コードの開発を行っています。
さらに、開発した解析コードによる解析結果と既存の室内試験結果との比較等を通じ、解析モデルの妥当性及び適用性の検討を行なうとともに、不明瞭な点の残るグラウトの注入メカニズムについて新たな知見を得ることを目標として研究を進めています。

流体-粒子連成解析(CFD-DEM)によるグラウトの注入メカニズムの解明

本研究では、流体流動を計算する数値流体力学 (Computational Fluid Dynamics, CFD)と粒状体の挙動を追跡する粒状体個別要素法(Distinct Element Method; DEM)を連成させることにより、流体流動と粒状体の相互作用を検討することのできる解析コード(CFD-DEM)の開発を行っています。

CFD-DEMにより、従来の数値モデルでは対応できなかった流動する流体中を浮遊する粒子の挙動を詳細に追跡することが可能となり、さらに、開発した解析コードによる解析結果と室内及び原位置試験結果との比較等を通じて開発したCFD-DEMモデルの妥当性及び適用性の検討を行なうとともに、不明瞭な点の残るグラウトの注入メカニズムについての検討を行っています。